知る
VO₂Max と健康の関係
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、全身持久力を、さまざまな原因による死亡や病気の発症を予測する強い因子だとしています。ここでは、その根拠になっている研究を、数値とともに紹介します。
図でわかる
多くの人を追跡し、体力と健康の関連を見る
1. 全身持久力を調べる
多くの参加者について、体力や生活習慣などを調べます。
2. その後を追跡する
長い期間、病気の発症や死亡などを追います。
3. 集団の関連を比べる
体力が異なる人の間で、起こり方に違いがあるかを調べます。
「関連」と「本人への効果」は別です。
スマートウォッチの値から、あなたの寿命や病気の確率を計算することはできません。
先に、読み方の注意
- ここで紹介するのは、多くの人を何年も追跡した研究(コホート研究)をまとめたものです。見つかったのは「全身持久力が異なる人の間の関連」です。個人が VO₂Max を高めたときの死亡リスクの変化を、そのまま示すものではありません。
- 研究の数値は集団の平均です。一人ひとりの将来を予測したり、保証したりするものではありません。
- VO₂Max が高い人は、運動習慣や生活習慣もほかと違うことがあります。研究はそうした要因をできるだけ調整していますが、完全には取り除けません。
1 メッツ高いと、どれくらい違うか
健康な成人を対象にした 33 のコホート研究(総死亡の解析で 102,980 人)をまとめた研究では、運動負荷試験で測った全身持久力が 1 メッツ高いごとに、総死亡の相対危険度は 0.87(95% 信頼区間 0.84〜0.90)、冠動脈・心血管のイベントは 0.85(0.82〜0.88)でした。つまり、おおよそ 13% と 15% 低い関連です(Kodama ら 2009)。
より新しい 34 のコホート研究のまとめでも、1 メッツ高いごとに、総死亡 0.88(0.83〜0.93)、心血管疾患による死亡 0.87(0.83〜0.91)、がんによる死亡 0.93(0.91〜0.96)という関連でした。全身持久力が最も高い群は、最も低い群と比べて、総死亡 0.47、心血管疾患死亡 0.49、がん死亡 0.57 でした(Han ら 2022)。
厚生労働省の資料は、これらの結果を「1 メッツあたり、総死亡や循環器病死亡の相対危険度が 10〜20% ほど低い」とまとめています。1 メッツは 3.5 mL/kg/分 にあたります。
研究で使われた「低い群」「高い群」
Kodama らの研究では、年齢・性別を補正し、全員を 50 歳男性に換算した値で、7.9 メッツ未満(約 27.7 mL/kg/分 未満)を低い群、10.9 メッツ以上(約 38.2 mL/kg/分 以上)を高い群としています。低い群は高い群と比べて、総死亡の相対危険度が 1.70(1.51〜1.92)、冠動脈・心血管イベントが 1.56(1.39〜1.75)でした。これらは研究上の群同士を比べた結果です。
手元の実測値やスマートウォッチの推定値をそのままこの区切りに当てはめて、「低体力」と判定したり、本人の将来のリスクを計算したりすることはできません。日本人の性・年代別の目安は、厚生労働省が 2023 年に示した基準値にまとめています。この基準値も個人の診断ではありません。
運動負荷試験をしなくても
上の 2 つの研究は、運動負荷試験で測った全身持久力を使っています。一方、年齢・安静時心拍数・体格・身体活動などから式で推定した全身持久力でも、1 メッツ高いごとに心血管死亡・総死亡のハザード比がともに 0.83(心血管 0.80〜0.86、総死亡 0.78〜0.88)という関連が、8 つのコホート研究(17 万人超)のまとめで報告されています。関連は直線的で、男女で差はありませんでした。ただし、予測の性能は、運動負荷試験で測った値よりわずかに劣るとされています(Qiu ら 2021)。
少し高めるだけでも
厚生労働省の資料は、全身持久力が低い人から高い人まで、今より少しでも高めることで、健康上の大きな利益が期待できるとしています。ただし、観察研究で見られた集団間の関連から、個人が高めた分だけ死亡リスクが下がると断定することはできません。
出典
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」INFORMATION 6「全身持久力(最高酸素摂取量)について」 https://www.mhlw.go.jp/content/001195874.pdf
- Kodama S, Saito K, Tanaka S, et al. Cardiorespiratory fitness as a quantitative predictor of all-cause mortality and cardiovascular events in healthy men and women: a meta-analysis. JAMA. 2009;301(19):2024-2035. https://doi.org/10.1001/jama.2009.681
- Han M, Qie R, Shi X, et al. Cardiorespiratory fitness and mortality from all causes, cardiovascular disease and cancer: dose-response meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022;56(13):733-739. https://doi.org/10.1136/bjsports-2021-104876
- Qiu S, Cai X, Sun Z, et al. Is estimated cardiorespiratory fitness an effective predictor for cardiovascular and all-cause mortality? A meta-analysis. Atherosclerosis. 2021;330:22-28. https://doi.org/10.1016/j.atherosclerosis.2021.06.904
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