高める
HIIT で VO₂Max を高める
HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、きつい運動と、休憩や軽い運動を交互に繰り返す方法です。研究では、同じ運動量の中強度の持続運動より VO₂Max を大きく上げた例があります。一方で強度が高く、研究の手順をそのまま誰にでも勧めることはできません。このページでは、研究で確かめられた条件と、一般的な安全の原則を分けて説明します。
始める前に
HIIT とは
インターバル運動は、強い運動を短い回復をはさんで繰り返す方法です。レビューでは、最大に近い強度の HIIT と、最大酸素摂取量に達する運動負荷を超える強度の SIT(スプリントインターバルトレーニング)を区別しています。主に健康な人を対象とした研究で、どちらにも VO₂Max や筋肉のミトコンドリア量の増加が報告されています。効果は運動の強度だけでなく、時間・頻度などにも左右されます(MacInnis & Gibala 2017)。
研究で使われた形 1: 4 分 × 4 本
運動習慣のある男子大学生を 4 つの方法に割り付け、総仕事量と頻度をそろえて週 3 回・8 週間行った研究です。解析対象は平均 24.6 歳の 40 人(各群 10 人)で、傾斜をつけたトレッドミルを使いました。運動習慣のない人や、高齢者・持病のある人に同じ結果や安全性を保証するものではありません(Helgerud ら 2007)。
- 研究の設定: 最大心拍数の 90〜95% で 4 分走る区間を 4 本。各本の間は、70% で 3 分の軽いジョギングを行いました。準備運動 10 分と整理運動 3 分を含め、1 回 38 分でした。
- 結果: 体重当たりの VO₂Max は 55.5 から 60.4 mL/kg/分 へ増加しました。同じ総仕事量の、最大心拍数 70% の持続走や、85%(乳酸閾値)の持続走より、有意に大きい増加でした。
疾患のない成人を対象とした 53 の RCT(1,514 人)のまとめでは、運動区間の長さ、1 回の高強度運動の合計時間、介入期間を別々に分類して比較しています。「高い運動量」は回復を除く高強度の運動が 1 回 15 分以上、「低い運動量」は 5 分以下という意味です。中強度の持続運動に対する優位性は、2 分以上の長い区間や高い運動量などの分類で見られましたが、対象集団によって異なります。複数の条件を組み合わせれば誰にでも最適、という結論ではありません(Wen ら 2019)。
研究条件の図解 · Helgerudら(2007)
4分走る区間の間にも、前後にも時間がある
- 1準備運動 10分まず準備をする
- 24分走る区間を4本各本の間に、軽いジョギング3分を挟む(計3回)
- 3整理運動 3分前後を含めて合計38分
運動習慣のある男子大学生を対象にした研究です。4分走は実測最大心拍数の90〜95%、間の軽いジョギングは70%で行いました。一般向けの実施メニューではなく、初心者や高齢者、持病のある人への安全性を示す図ではありません。
研究で使われた形 2: 短いインターバル
- 15 秒 / 15 秒: 上と同じ研究で、最大心拍数の 90〜95% で 15 秒走り、70% に相当する速度で 15 秒動く回復を 47 回繰り返しました。準備運動 10 分・整理運動 3 分を含め、約 37 分です。体重当たりの VO₂Max は 60.5 から 64.4 mL/kg/分 へ増加しました。持続走より増加が大きい一方、4 分 × 4 本との増加量の差は有意ではありませんでした(Helgerud ら 2007)。
- 20 秒 / 10 秒 × 7〜8 本: 「タバタ式」として知られる形の元になった研究です。自転車エルゴメーターで、酸素需要量がVO₂Maxの約170%に相当する負荷を用いました。6 週間の介入を行った 7 人で、VO₂Max が 7 mL/kg/分、無酸素性の能力が 28% 増加しました(Tabata ら 1996)。著者自身の後年の説明では、週 4 日は 20 秒運動・10 秒休息を 7〜8 本。残りの 1 日は、VO₂Max の 70% で 30 分の持続運動と、疲労困憊に至らない 4 本を組み合わせています(Tabata 2019)。
20 秒 / 10 秒の反復部分が約 4 分でも、研究全体は「毎日 4 分だけ」の運動ではありません。準備・整理や、別日に組み合わせた持続運動も区別して読む必要があります。また、時間配分が同じでも、負荷や運動種目が違えばこの研究と同じ効果が得られるとは限りません。Wen ら(2019)のまとめでは、30 秒以下の短い区間の HIIT でも運動しない群より改善しましたが、中強度の持続運動に対する優位性は明確ではありませんでした。
研究で使われた強度を、心拍数で読む
4 分 × 4 本の研究では、測定した最大心拍数の 90〜95% が目標でした。年齢から最大心拍数を推定する「208 − 0.7 × 年齢」(Tanaka ら 2001)もありますが、個人の値とはずれることがあります。次は割合の意味を示す計算例で、あなたへの運動目標ではありません。
例: 40 歳なら、推定の最大心拍数は 180 拍/分。90〜95% は 162〜171 拍/分、回復の 70% は 126 拍/分 です。
- 年齢の推定値やスマートウォッチに記録された最高値だけで、安全な運動強度を決めることはできません。最大心拍数を確かめるために、無理な運動をしないでください。
- 心拍数は運動を始めてから遅れて上がります。インターバルの初めから目標に届いていなくても、ふつうです。
- β遮断薬、一部のカルシウム拮抗薬、α遮断薬などは心拍数に影響します。服薬中は先に医師に相談し、使える強度の目安を確認してください。心拍の目標を自己判断で「きつい」「かなりきつい」に置き換えて HIIT を行うことは勧めません(厚生労働省 2023、INFORMATION 4)。
研究の頻度と期間
- Helgerud ら(2007)は週 3 回・8 週間。Tabata ら(1996)は週 5 日・6 週間ですが、週内で異なるメニューを組み合わせていました。いずれも、一般向けの開始量を示した研究ではありません。
- まとめの研究では、介入期間が長いほど、VO₂Max の上がり幅が大きい傾向でした(Milanović ら 2015)。
- 高強度の運動の翌日に、日常生活に支障が出るほど疲れが残るときは、強さや量が過剰です。休養をとり、次回は控えめにします(厚生労働省 2023、INFORMATION 4)。
安全に行うために
- 準備運動を必ず行う。 ある程度の強さの運動では、ウォームアップが傷害や内科的な事故の予防になります。
- 急に止まらない。 運動後は 5〜10 分のクールダウンで、めまいや失神を防ぎます。
- やめる症状。 運動中に胸の痛み、冷や汗、動悸、いつもと違う強い疲れ、めまいやふらつき、関節や筋肉の強い痛みなどを感じたら、すぐに中止します。
- その日の体調。 熱がある、だるい、睡眠不足で体調が悪い、胸が痛いなど、当日の体調確認で 1 つでも当てはまれば、無理に運動せず休みます。
以上は厚生労働省の INFORMATION 4 によります。くわしくは安全に始めるためにをご覧ください。
冠動脈疾患や心不全のある人を対象に、外来の心臓リハビリテーションで HIIT と中強度の持続運動を比較した 23 の研究では、計 1,117 人のうち HIIT 群は 547 人でした。HIIT に関連した重大な心血管イベントは 1 件で、17,083 セッションに 1 件の割合でした(Wewege ら 2018)。医療管理下の結果で、一人で行う場合の安全性を示すものではありません。
研究のメニューと、自分の始め方を分ける
運動習慣がない人は、低強度・短時間から始め、体調と翌日の疲れを確かめながら徐々に増やすことが基本です。紹介した研究は「何週間たったら HIIT に移るか」や「何本から始めるか」を一般の人に向けて検証したものではありません。
HIIT を取り入れるか、どの程度の負荷にするかは、運動習慣や健康状態に合わせて考えます。持病・服薬・気になる症状がある場合は先に医師へ相談し、始め方に迷う場合は運動指導の専門家にも相談してください。
出典
- MacInnis MJ, Gibala MJ. Physiological adaptations to interval training and the role of exercise intensity. J Physiol. 2017;595(9):2915-2930. https://doi.org/10.1113/JP273196
- Helgerud J, Høydal K, Wang E, et al. Aerobic high-intensity intervals improve VO2max more than moderate training. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(4):665-671. https://doi.org/10.1249/mss.0b013e3180304570
- Wen D, Utesch T, Wu J, et al. Effects of different protocols of high intensity interval training for VO2max improvements in adults: A meta-analysis of randomised controlled trials. J Sci Med Sport. 2019;22(8):941-947. https://doi.org/10.1016/j.jsams.2019.01.013
- Tabata I, Nishimura K, Kouzaki M, et al. Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max. Med Sci Sports Exerc. 1996;28(10):1327-1330. https://doi.org/10.1097/00005768-199610000-00018
- Tabata I. Tabata training: one of the most energetically effective high-intensity intermittent training methods. J Physiol Sci. 2019;69(4):559-572. https://doi.org/10.1007/s12576-019-00676-7
- Milanović Z, Sporiš G, Weston M. Effectiveness of High-Intensity Interval Training (HIT) and Continuous Endurance Training for VO2max Improvements: A Systematic Review and Meta-Analysis of Controlled Trials. Sports Med. 2015;45(10):1469-1481. https://doi.org/10.1007/s40279-015-0365-0
- Tanaka H, Monahan KD, Seals DR. Age-predicted maximal heart rate revisited. J Am Coll Cardiol. 2001;37(1):153-156. https://doi.org/10.1016/S0735-1097(00)01054-8
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」INFORMATION 4「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」 https://www.mhlw.go.jp/content/001195872.pdf
- Wewege MA, Ahn D, Yu J, Liou K, Keech A. High-Intensity Interval Training for Patients With Cardiovascular Disease—Is It Safe? A Systematic Review. J Am Heart Assoc. 2018;7(21):e009305. https://doi.org/10.1161/JAHA.118.009305
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